オーパーツ「バグダッド電池」とは? 電池だと考えられる理由、使用目的、有力な仮説を紹介

 世界で最初の電池は1800年にイタリアのボルタによって発明された。その功績から電圧の基本単位「ボルト(V)」に名を残している。しかし、一説では人類はそれよりずっと以前に電池を発明していたという。その可能性を示すのがオーパーツ「バグダッド電池(Baghdad Battery)」だ。

※ オーパーツとは英語の「out-of-place artifacts」を略して「OOPARTS」とした語である。直訳すれば場違いな工芸品である。主に出土品などが、考古学上その成立や製造法などが不明とされたり、当時の文明の加工技術や知見では製造が困難あるいは不可能に見える場合にオーパーツと見なされることが多い。しかし、学問上の研究対象になることは少なく、多くのオーパーツやそれにまつわる超古代文明の存在や古代の地球に宇宙人が飛来し技術をもたらしたとする「古代宇宙飛行士説」はオカルトとみなされる。代表的なオーパーツは、アステカ遺跡で発掘されたとされる「水晶髑髏」、ギリシャのアンティキラ島近海で発見された「アンティキラ島の機械」、バグダードで製造されたとされる土器「バグダッド電池」、未知の文字で書かれた古文書「ヴォイニッチ手稿」、工芸品以外ではペルーの「ナスカの地上絵」、イギリスの「ストーンヘンジ」などがある。

 バグダッド電池は1932年頃にイラク・バグダッド近郊のホイヤットランプファ遺跡で発掘された。出土したのは民家遺構の中で、呪文が書かれた3つの鉢とともに置かれていたという。

 バグダッド電池は、一見するとただの壺型の土器のような形状をしているが、上部から鉄製の棒が突き出ている点で他と一線を画している。

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バグダッド電池イメージ図(画像は「Getty Images」より)

 発見者であるドイツ人研究者のヴィルヘルム・ケーニッヒは、この土器を3世紀頃まで存在した古代イラン王朝パルティアで作られた世界最古の電池だと確信。その後、この説は学界で激しく議論され、現在ではケーニッヒの説は誤りであったと信じられている。

 だが、常識を覆すような学説は常に批判の的になるものだ。ケーニッヒがなぜこの土器を電池だと考えたのか、そこにバグダッド電池の謎の根源がある。

バグダッド電池とは?

 バグダッド電池は、3つの遺物が入れ子状になっている。土器の中には銅製の円筒状の筒が入っており、その中に鉄棒が包まれていて、土器の口の部分はアスファルトで閉じられている。

 発見者のケーニッヒは画家であり、後にイラク国立博物館の館長となる考古学者でもある。彼がいつ、どこで、どのようにバグダッド電池を発見したのか、その詳細は不明だ。

 現在のイラクの首都バグダッドのクジュット・ラブという場所で発見されたというのが定説だが、1936年の発掘調査で発見したという説もあれば、1938年にイラクの国立博物館の地下で発見したという説もある。

 ただ間違いなく言えることは、古代王都クテシフォン近辺から出土したものであることだ。しかし、その制作年代はまた別の話である。クテシフォンは、パルティア帝国とササン朝イラン帝国の首都であった。ケーニッヒは、バグダッド電池をパルティア帝国のものだと断定し、紀元前150年から紀元後223年の間のものとした。しかし、最近ではササン朝(紀元後224年から650年)のものだと考えられている。とはいえ、世界初のボルタ電池は1800年に発明されているため、バグダッド電池の出現は驚くべきほど早い。

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クテシフォン(画像は「Getty Images」より)

 いずれにしろ、ケーニッヒは1938年にドイツ学術誌『Research and Progress』にバグダッド電池に関する論文を掲載。そこで彼はこの不思議な出土品についての持論を展開した。ケーニッヒは何がきっかけで、この土瓶が古代パルティア帝国の電池であると確信したのだろうか。

バグダッド電池は電池だったのか?

バグダッド電池の謎の核心は、この出土品が電池として作られたのかという点だ。ケーニッヒは、その根拠となる古代の文献を持ち合わせていなかった。そして、今日に至るまで、そのような文献は見つかっていない。

 では、なぜ彼は古代電池という壮大な結論に至ったのか。ケーニッヒが注目したのは、バグダッド電池が電位の異なる2つの金属で作られている点だ。電位が異なる2つの金属と電解液は、電池の主要な構成要素である。それを裏付けるように、土器の中にはイオン性の溶液、つまり電解液が存在していた可能性がある。腐食の具合から、酢やワインのようなものが入っていたと考えられている。

 バグダッド電池にそうした溶液を加えると、確かに1ボルト程度の電気が発生する。電線があれば、もっと高い電圧になったかもしれない。

 ところで、仮にバグダッド電池が本当に電池であった場合、いったい何のために使用されたのか。

バグダッド電池は何に使われたのか

 たとえば、バグダッド電池を神聖な偶像の中に埋め込み、それに触れた信者を「ざわつかせる」ようにした、という宗教的な手品もその1つだ。

 一方、ケーニッヒはバグダッド電池は金メッキ加工に使われたものだと考えている。当時は宝飾品製造などでそのような行為が行われていたことが知られているが、より原始的な方法を使っていた。彼は電気メッキをより簡単に行えるようにするためにバグダッド電池が開発されたという説を唱えたのだ。

 この説を批判する人は、当時もその後もそのような方法が使われていた証拠がないことを指摘している

 ケーニッヒの説の主な欠点の一つは、バグダッド電池そのものの効力に関するものである。そのままでは1ボルト程度の電圧しか生み出せない。これではとても電力を供給することはできず、金メッキの加工にも使用できない上、電力を増幅するワイヤーも発見されていない。

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イラク国立博物館に保管されていたバグダッド電池(画像は「YouTube」より)

巻物保管容器説

 バグダッド電池は、かつて宗教的な巻物を保管するための容器だったと考える人が多い。ティグリスのような近隣の遺跡にある他の容器と見た目が似ているだけでなく、バグダッド電池はそのような壷型の土器がたくさんある場所で発見されている。

 この仮説によると、鉄棒に巻物を巻き付け、それを銅の筒の中に入れていたことになる。ケーニッヒ自身も論文の中で、このような巻物のための壺が発掘現場でよく見つかったと言及している。

バグダッド電池の現在

 古代の電池という発想は興味深いものだ。しかし、多くの人が指摘するように、電池だったかもしれないからといって、実際に電池として使われていたことは証明されていない。現在のところ、巻物の保管容器として使われた可能性の方がはるかに高い。

 悲しいことに、現在、バグダッド電池の真相を解明することは極めて困難になっている。2003年、米軍によるイラク侵攻の際にイラク国立博物館から数千点の文化財が略奪されたが、その中にバグダッド電池も含まれていた。その所在は現在も不明である。

参考:「Discovery」ほか

文=S・マスカラス(TOCANA編集部)

3代目TOCANA編集長
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